今更、"lost"
今更ですが、海外ドラマの"lost"にはまり、一気に見てしまいました。
いやあ、これ本当に面白かった。思い返せば、かれこれ10年近く前、せっせとツタヤでDVDをレンタルしていた時、店内に流れる宣伝で「"lost"、ある島に墜落した者達が…」と耳にはしていたんです。
流行りなんぞにのってたまるか!とそっくり返り、かつアメリカ嫌いだった(そこに確かな理由はない)自分は、誰がそんなもん見るか!と小難しいヨーロッパ文芸映画ばかりを見ていたのです。(ああ本当に面倒くさい奴だ)
それから時は流れ、英米圏の海外ドラマの圧倒的な質、量に白旗をあげた自分は、何か面白いドラマはないかなあ〜と、すっかり海外ドラマジャンキーの初期症状に陥っておりました。
探してみたら、あるじゃないですか、"lost"が。
ほぉ、見てみるか。
これが見始めたら、浅はかな期待がひっくり返るくらいに裏切られまくり。
せいぜい、ある島に墜落した一癖、二癖ある奴らが、島から帰還するまでのサバイバルと人間ドラマを描くのだろうよと、たかをくくっていたら、もう物語の複雑さと、層の厚みが桁外れ。
ごく単純に要約すると、先に書いた通りになるのだろうけど、各人の島からの脱出を巡るドラマと、墜落前の過去がフラッシュバックで挿入されて、複雑で重層的な、厚みのある物語を獲得しています。
詳しくはもちろん見てもらうのが一番良いと思いますが、俳優陣の素晴らしさもさることながら、どうやって、こんなにも奥行きがあり、多層的な世界を表現する脚本を完成することができたのか、そこに個人的には一番関心があります。
ドラマの中に、ソーヤという重要なキャラがいるのですが、詐欺師で粗暴な人物として登場します。しかし、そんなソーヤですが、文学的な引用に富んだ気の利いた皮肉を口にし、また読者家でもあります。スティーブン・キングやドストエフスキーも有用な小道具として、著作が登場するので、きっと製作陣は彼らからインスピレーションを得ているのでしょうね。また、しばし井戸も重要なメタファーとして扱われるあたりは、村上春樹っぽくもありましたね。
英米圏文学の先人達の遺産が、こうして現代に海外ドラマとして、その姿を変え、生かされているんだなぁと思いました。
10連休、家にお籠り予定の方にオススメです。謎が謎を呼ぶ展開で見るのを止められなくなるので、くれぐれも注意してくださいね。