no plan

無計画な日々

核シェルター

生来の人付き合いの悪さと出不精のせいで、私には馴染みの店などほとんどないのだが、上司が呑むのに付き合っていたら、私にも少し常連ぶれる店ができた。

店の名前は居酒屋「一方向」。真っ直ぐに店に直行して欲しいという狙いで命名したそうだ。「一方向」の売りは何と言っても、マスターが手際よく繰り出す、酒に良く合う美味しい料理達だ。値段、量とも申し分なく、メニューも豊富なので、女性にも好評のようだ。

「一方向」は昨年まで三宿にあったのだが、店舗の老朽化に伴い市ヶ谷に店舗を移転した。それっきり、「一方向」から遠ざかっていたのだが、昨日久しぶりにマスターの田嶋さんに会った。

田嶋さんは息子さんの高校の就学支援金とやらの手続きをされているようで、この就学支援金とやらが、自営業者からするととても助かるのだと言う。

「うちの学校で、これ貰っているの俺んちくらいなんですよ、本当金持ちばかっでさあ。」

田嶋さんの息子さんは、頭が良いらしく、誰もが知っているであろう某有名私立大学の付属高校に通われているそうだ。

「玄関でさえ十畳くらいある家がザラなんすよ、うちにその金持ちの友達連れてくるんだけど恥ずかしくてしょうがないっすよ。ガキの部屋なんかさあ、屋根裏部屋みたいな感じで三畳なんすよ。多分キャンプしにくるみたいな感じで遊びに来るんでしょうけどさあ。で、また凄いのが友達の家、みんな核シェルターがあるって言うんですよ。核シェルターないのうちだけだっつうんだからさあ。」

私の知らない間に、富裕層は核戦争の備えをしっかりしているようだ。

「その核シェルターに、食糧が備蓄されてるんですけど、三年か五年で一斉に賞味期限が切れるんですよ、缶詰めとかの。うちの店で召し上がって頂いてた料理、その残りなんですよ。結構美味しいでしょ。」

確かに結構美味しい。田嶋さんの店は核戦争後も繁盛しそうだ。

 

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