たまねぎ=長谷部誠
たまねぎは本当に偉いと思う。
自分は決して主役にしゃしゃり出るわけではないのに、料理に加われば必ずや料理の味を一ランク上に押し上げる。
先日のこと、自他共に認める味噌汁好きの僕もたまには、味噌汁以外の汁物が食べたいと思い、冷蔵庫を見ると、どうやらコンソメスープは作れそうだと検討を付けた。
もちろんコンソメの素を使ったものなのだけど、コンソメの素の味が前面に出過ぎると、美味しいは美味しいのだが、いささか化学的な味になってしまう。
そこで、たまねぎの出番というわけだ。必需品として冷蔵庫の野菜室に放り込まれたたまねぎを取り出し、雑に皮を剥き、雑に乱切りする。立ち食い蕎麦屋のカレーの中には、乱切りにすらされておらず、球体の四分の一くらいの物体がドカっと入っていることがあるが、そんな扱われ方ですら、たまねぎはしっかり自分の仕事を淡々とこなしてくる。
たまねぎの加わったコンソメスープは運命を共にしたじゃがいもと、仲良く手をとり、大地の恵みを思わせる、深みのある味を生み出した。乾燥パセリなんぞをささっと振りかければ、どこぞのレストランの前菜に加わっても遜色のない出来だ。
たまねぎという存在はなんと偉大なのだろう。献身的にハードワークをこなし、的確に味の方向性をコントロールし、料理する人の戦術理解も早い。
まるで長谷部誠のようだ。
さて、今日はたまねぎで何作ろうか。